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ごめんなさい、まだ、続きます。
これってSSじゃないのかしら?
でも、短いですよね。
これってSSじゃないのかしら?
でも、短いですよね。
兄貴の四十九日が済んだ後に、ボクは明子と会った。
もちろん現住所も新しい姓も知らなくて、兄貴の住所録から川村先輩の連絡先を引っ張り出してきて、川村先輩に彼女の情報を教えてもらったのだ。
そして、今、目の前には明子がいる。
昔より少しふっくらして、でも、薄化粧で、やわらかい印象になった明子。
「ごめん、突然呼び出して」
ボクの言葉に彼女はゆっくりと首を振った。
「大変だったわね、お疲れ様……」
急なことでまだなんて言っていいか、と戸惑いながら彼女はねぎらいの言葉をかけてきた。
ボクは首をふって、それから明子に渡そうと持って来た封筒を差し出した。
「形見分けって言うのかわかんないけど、これ、もし良かったら貰ってもらえないかな」
それは昔兄貴と明子が付き合っていた頃の写真。
いくつかをアルバムから剥がして来た。
「もし迷惑だったら捨ててもらってかまわない」
「そんな」
明子は封筒の中身を見てやわらかに目を細めた。
「義晴先輩の写真、一つも残ってないから嬉しい」
本当に嬉しそうににっこりとしたのを見てボクはホッとした。今更過去の男の写真など迷惑でしかないんじゃないかと思っていたから。
それでも彼女に持っていて欲しくて、呼び出してしまった。
本当は電話で有無を尋ねて郵送すればいいだけだったんだけれど(実際川村先輩への形見分けは宅急便で送ってしまった)、どうしてもボクはもう一度明子と会って話がしたかった。
「ボク、……大丈夫??」
写真をしまった明子は気遣わしげなまなざしでボクを見つめてささやくように言った。
意味がわからなくて首をかしげると、
「何だかすごく辛そうな顔をしているから」
もちろんあんなことがあって、辛くないわけもなく。風化するにはまだまだ時間が経ってなくて。
でも、明子がボクをこんなふうに心配してくれるなんて、驚いた。
だってボクと彼女は殆ど話らしい話をしたことが無かったんだから。
「……私、義晴先輩のこと、大好きだったわ」
ボクが何も言わずにぼんやりと明子を眺めていると、視線を落として、ぽつりぽつりと彼女が話し始めた。
「うちの兄はあんなんでがさつでけっこうな乱暴ものだったから、義晴先輩が兄弟だったらって、いつも思ってた」
「義晴先輩と付き合ったのも……付き合ったって程じゃないけど、何度か一緒に出かけたのも、いいなぁって思ったから。
でも――」
伏し目がちな目を上げて、僕の目をじっと見つめる。
「先輩の心に私はいなかった。だから、ずっと、判らなかった。先輩がどうして私と付き合おうとしたか」
話の先が全然見えなくて、明子のまっすぐな視線に耐えられなくて、ボクはきょろきょろと目を彷徨わせた。
もちろん現住所も新しい姓も知らなくて、兄貴の住所録から川村先輩の連絡先を引っ張り出してきて、川村先輩に彼女の情報を教えてもらったのだ。
そして、今、目の前には明子がいる。
昔より少しふっくらして、でも、薄化粧で、やわらかい印象になった明子。
「ごめん、突然呼び出して」
ボクの言葉に彼女はゆっくりと首を振った。
「大変だったわね、お疲れ様……」
急なことでまだなんて言っていいか、と戸惑いながら彼女はねぎらいの言葉をかけてきた。
ボクは首をふって、それから明子に渡そうと持って来た封筒を差し出した。
「形見分けって言うのかわかんないけど、これ、もし良かったら貰ってもらえないかな」
それは昔兄貴と明子が付き合っていた頃の写真。
いくつかをアルバムから剥がして来た。
「もし迷惑だったら捨ててもらってかまわない」
「そんな」
明子は封筒の中身を見てやわらかに目を細めた。
「義晴先輩の写真、一つも残ってないから嬉しい」
本当に嬉しそうににっこりとしたのを見てボクはホッとした。今更過去の男の写真など迷惑でしかないんじゃないかと思っていたから。
それでも彼女に持っていて欲しくて、呼び出してしまった。
本当は電話で有無を尋ねて郵送すればいいだけだったんだけれど(実際川村先輩への形見分けは宅急便で送ってしまった)、どうしてもボクはもう一度明子と会って話がしたかった。
「ボク、……大丈夫??」
写真をしまった明子は気遣わしげなまなざしでボクを見つめてささやくように言った。
意味がわからなくて首をかしげると、
「何だかすごく辛そうな顔をしているから」
もちろんあんなことがあって、辛くないわけもなく。風化するにはまだまだ時間が経ってなくて。
でも、明子がボクをこんなふうに心配してくれるなんて、驚いた。
だってボクと彼女は殆ど話らしい話をしたことが無かったんだから。
「……私、義晴先輩のこと、大好きだったわ」
ボクが何も言わずにぼんやりと明子を眺めていると、視線を落として、ぽつりぽつりと彼女が話し始めた。
「うちの兄はあんなんでがさつでけっこうな乱暴ものだったから、義晴先輩が兄弟だったらって、いつも思ってた」
「義晴先輩と付き合ったのも……付き合ったって程じゃないけど、何度か一緒に出かけたのも、いいなぁって思ったから。
でも――」
伏し目がちな目を上げて、僕の目をじっと見つめる。
「先輩の心に私はいなかった。だから、ずっと、判らなかった。先輩がどうして私と付き合おうとしたか」
話の先が全然見えなくて、明子のまっすぐな視線に耐えられなくて、ボクはきょろきょろと目を彷徨わせた。
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