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ひねりがなくて、本当にすいません。
実はもっと早く更新できたはずなんですけど、うっかりお風呂で寝てしまって、物凄い風邪を引いております。
喉と鼻と胸が痛い。
胸がぜろぜろいってます(涙)
そして題と関連が微妙です、相変わらず。
寒くなってきましたので、皆さまもどうぞお気をつけ下さい。
【恋に、堕ちる。 8】
「桜さんですよね??」
瞳を輝かせて迫ってくる女性に私は思わず、後ずさった。
「ち、違うわ」
「だって、桜さんって呼んだらこっちを向いたわ」
確かに私は“サクラ”というキーワードに無意識に反応してしまった。
彼女にとっては疑わしい反応だろう。
それでも私は努めて冷静になろうと深呼吸した。
「落ち着いて、落ち着いて頂戴。そして私の話を聞いて欲しいの」
私はごくゆっくりと興奮しきった小さな子供に言い聞かせるように言葉を紡いだ。
「先にひとつだけ私に教えて欲しいの。あなた、私の記帳を見たのかしら??」
私の問いかけにメガネの女性――乃明は緩慢に首を振った。
「記帳を見てもらえば分かるとと思うのだけど、私の苗字は“サクラ”と言います。“にんべん”に左と書いて佐、倉庫の倉でクラ。あなたに“サクラ”って呼ばれてびっくりしたのは自分の名前だったからなのよ。見ず知らずの人に名前を呼ばれたら誰だって驚くでしょう??」
私はそこで無理をしてわざと微笑んだ。実は、苗字が佐倉だからハンドルネームを“桜”にしたのだ。漢字は違うけれど呼ばれる分には本名と一緒。それも桜だと苗字ではなく名前の方に感じるだろうと思ってのこと。
「私があなたの知り合いの誰かじゃなくて本当にごめんなさいね」
二度も間違えてしまったと思えば、乃明の落ち込みは半端じゃないだろう。
私は自分は少しも悪くないのに謝罪する親切なおばさんを装ってその場を離れた。
「な~~んて事があったわよね」
メガネの女性――乃明――本名、野間楓が背中から抱きついてきて私の耳元で笑いながら言った。背中越しに乃明の楽しそうな笑いの波動が私に伝わる。
私は当時の様子を思い出して思わず口元を綻ばせた。
もし、運命というものがあるなら、結局私達は繋がる運命だったのだ。
あの後も偶然に何度も出会って、結局私が件の“桜”だとばれてしまったのだ。そして小さな時に母親が蒸発してしまった乃明――楓――は私を恋人としてそして恐らくは母親の代わりとして求めて愛している。
それでいいのだ。
私も乃明を恋人として、そして娘として――実際に私が子供を産む事は恐らくないから――愛してゆけばいいのだから。
私達は養子縁組を済ませ、本当の家族になったのだから。
END