[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
一応、こんな感じでブログに更新していきます。
まとまったら手直ししてサイトに順次アップしていこうと考えています。
続きからどうぞ。
▼ご注意
この話には暴力的かつ流血をともなうような痛いシーンや行為があります。
また克明な描写ではありませんが男女のセックスシーンがあります。
フィクションと割り切って読んでいただく事をお勧めいたします。
ご了解いただけた方のみ、先にお進みください。
ご了解いただけない方はブラウザを閉じてお戻り下さい。
インターフォンごしに海野美波の輝くような笑顔を目にして私は自分が幻覚を見ているのではないかと呆然とした。
幻覚を見るほどに少女に焦がれていたのだと、思い知る。
「先生、海野です、入れて下さい……」
幻覚だけじゃなく、幻聴まで――。
「先生??」
首をかしげるさまがなんて愛らしいんだろうと、思って、ハッと我に返った。
「う、海野さん!?」
「はい。お話ししたい事があるんです」
それから私は慌ててマンションのオートロックを解除して、家中をぐるぐると回った。掃除は午前中に済ませたからそんなに散らかっているわけじゃないのに、ラックの雑誌を整えたり玄関周りを片つけたり、書斎の机の上の書類を何度も何度も揃えたりした。
多分、5分もしないくらいで玄関のインターフォンが鳴った。
インターフォンに応答しないで玄関まで走って出迎えてしまったのは、変わらない彼女の吸引力のなせる業だったのかもしれない。
扉を開けると海野美波はほっそりとした腕を私の首に回して文字通り胸に飛び込んできた。
「先生!! 会いたかった!!」
海外旅行に行くみたいに大きなスーツケースと、斜めがけできるやはり大きなスポーツバッグ。
「――どこかに行くの?」
海野美波のいでたちに私は思わず尋ねた。彼女は変わらない強く輝く瞳でまっすぐに私を見つめて、
「今でも先生だけを愛しています。
だから先生の傍に居させて下さい」
それでは私と一緒に暮らすためにここに?
「もう私の事好きじゃないですか?
先生には他に好きな人がいるんですか?」
1年半近く言葉を交わすことも無く見つめることも無く過ごしてきた私達。
でも、歳月も私の恋心を冷まさせることは出来なかった。
それでは諦めると言って泣いた海野さんも、ずっと私の事を思い続けてくれたという事?
私は何も語る言葉を持たなかった。
ただ、胸の奥から競りあがってくる焼け付くような熱い何かを堪えようと口を覆った。
「あなたを愛しています。
私にあなたを愛させて下さい」
真っ直ぐに見つめる強いまなざしに、目を合わせていられなくて逃げるように思わず閉じると、私の頬を熱いものが伝った。
この恋は私を弱くする。
どうして私は泣いてばかりいるのだろう。
嬉しくても哀しくても涙が出るのと、初めて知った瞬間だった。