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今週中に終わるといいなぁ。

あともう一息です。

 会う度に笑顔をなくしていく美咲さんに、私の方が苦しくて、泣いて縋って旦那さんと別れて自分と付き合って欲しいと言いたかった。
 でも、美咲さんが私に求めているのは触れ合わない関係。
 妹のように、友達のように話は聞くけれど、絶対に恋人にはならない関係。
 美咲さんは生まれてから一度も人を好きになった事がないらしい。
 自分のそういう情緒的欠陥を知っていたからこそ、彼女は早いうちから誰とも結婚しないと決めていたそうだ。
 もし結婚しても愛情のない家庭に幸せが来るとは思えないから、と。
 だから美咲さんは旦那さんのような熱烈すぎる愛情に恐怖すら覚えていた。結婚したくないと激しく抵抗したのもそんな理由かららしい。
「私は人として大事なものが欠けてるの。だから強い感情や激しい情念がとても怖いのよ」
 旦那さんと結婚して15年が経っても彼女からその恐怖は拭えなかった。未だに旦那さんの情熱的な執着が彼女には理解できないのだ。それを嬉しいと感じる気持ちすらない。それはただただ、彼女を怯えさせ、恐怖におののかせるだけだった。
「私、離婚しようと思うの……」
 ある日、美咲さんの口からその言葉がこぼれ出した時、私は自分の願望が叶った夢を見ているのかと思った。
 たとえ私と付き合ってくれなくても、少なくとも美咲さんが現在の苦行から離れられると考えればとても喜ばしい事だったから。
「旦那がまた浮気をしてて『別れよう』って言ったら初めて『判った』って言ったの。今の相手に夢中なうちに別れた方が良いんじゃないかって思って……」
 5年前のちょっとした浮気を結果的に美咲さんから許された旦那さんはそれからちょくちょく浮気をするようになった。今現在は10歳年下の若くて可愛い彼女に夢中らしい。
 未だかつてこんなに熱中している旦那さんを見たことがなく、もしかしたらこれが最初で最後のチャンスかも知れない。そう、美咲さんは思ったらしい。
「でも、最近だよね、セックスしたの……」
 セックスするって事は気持ちが残ってる証拠な気がする。恋愛経験がない私が言うのもなんだけど。美咲さんが言うほど夢中なら、浮気相手一本になるんじゃないだろうか。
「う~~ん」
 私の質問に美咲さんは華奢な首を傾げて眉を潜めた。
「私も他人の気持ちって判らない人だから何とも言えないけど、なんだろう、そんな気がするの。この間のセックスは多分、私を放置している旦那の罪悪感なんじゃないかな。愛情じゃないと思う。
 もし、愛情だったらもっと優しいセックスだったと思う。たとえ私にとっての痛みは変わらなくても、気持ちの入り方が違うのよ」
 それは今まで経験してきたからこそ判る微妙な違いなのだろう。
 だから美咲さんは今こそ別れ時だと判断したのだろう。
「何か私に手伝える事があったら何でも言って下さいね」
 私が言うと、美咲さんはにっこりとして、
「大丈夫、この日の為に何年も前から準備していたから……」
 5年前、初めて旦那さんが浮気をしてから、もしかしたら美咲さんは今日のこの日がくる事を予感していたのかも知れない。
「今まで有り難う、なっちゃん。とてもとても感謝してる。でも、もう私達会わない方がいいと思うの……」
 そう告げられて、やっぱりこれは夢に違いないと私は思った。そう、悪夢に違いないと。

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