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終わりませんでした><

 それが起きたのはボク達が中2になった春、ボクと明子の兄達が卒業したばかりの頃。

 まるでタイミングを見計らっていたように、生徒会長で文武両道の上、容姿端麗、サッカー部のエースの3年生が明子に告白した。

 当時学校中の女子から熱烈に愛されていたスーパースター、学校のアイドルからの告白を、受けてしまえればよかったのだけれど、明子は考える事も無くあっさりと断ってしまった。

 その為学校中の女子が彼女の敵にまわってしまったのだ。

 せめて告白を受けて付き合えば、絵に描いたような美男美女のカップルが誕生し、一部の女子に恨まれる事があったとしても全女子を敵に回すことは無かっただろう。

 何せ二人はお似合いで、殆どの女子は諦めがついたはずだ。

 反対に男子からは『あの生徒会長を振った』という事で更に人気が高まったりしたのだが、残念ながらそれは明子には何の利益ももたらさなかった。

「ボク。……いえ、晴子さん。……今はなんて呼ばれているのかしら。晴子さんのままでいいのかしら?

 義晴先輩が亡くなって、あなたは先輩の代わりに血を残さなきゃと思っているかも知れないけれど、そうする事があなたにとって幸せ?

 あなたには大好きな人と幸せになってもらいたいの。

 それが義晴先輩の願いだと思うから……」

 まるでボクの心を読み取ったかのように明子が言う。

「だって、兄貴が逝ってしまったら、兄貴の遺志を継ぐのが残された者の務めじゃないか。

 兄貴は結婚してたくさん子供を作るって言ってた。

 だからボクが結婚してたくさん子供を作らなきゃ……」

 明子は首をかしげた。

「そうね。もちろんそう出来たら一番でしょうね。あなたが幸せになれるなら。

 先輩ももちろんご両親も、そして私もそれを願っているから。

 ただ、私が言いたいのは、どうしても無理なら、自分の幸せだけを考えても良いんじゃないかという事。

 たとえ血を残せなくても、好きな人と一生を共にして良いと思うわ。

 あなたが幸せなら、それが、きっと先輩の幸せだっただろうから」

 ボクは長い長いため息をつくと目元を袖でぬぐってやっと顔を上げた。

「結婚して子供を作るよ。

 ボクが、今まで好きになったのはきみだけだし、きっとこれからもきみだけだから。

 好きな人と一緒に幸せに暮らすっていう選択肢は初めから無い」

 ひたと明子の目を見つめて告白する。

 明子は人妻だ。そして子供もいる。

 それでもずっと抱えてた気持ちを、そしてこれから抱え続ける気持ちを、告げずにはいられなかった。なぜならボク達はもう二度と会いまみえる事は無いだろうから。

 重なるはずの無いボク達の人生がたまたまこの時点で一瞬だけ交差したのだ。

 ボクの告白に目を瞠って動きを止めていた明子は、まるで呼吸を止めていたかのように大きく長く息を吐いた。

「――ありがとう」

 言葉をつむぐ唇が柔らかにほころぶ。

「とても嬉しい。ありがとう。

 私には夫も子供もいるけど。

 私も今でもあなたが一番好きよ。

 こんな事を言う資格は無いかもしれないけれど、世界で一番、あなたを愛してるわ」

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